処方箋が消えていく薬局でどう対応していくか。
2026/07/27
投稿者:春馬静人
最近、こんな相談が増えました。
「先生に、この栄養剤はもう処方できなくなったって言われました。代わりになるものを探しているんですが...」
処方箋を手に持ちながら、困惑した表情でそう話される患者さまやご家族の姿を薬局で見かけることが増えています。 処方箋には載っていない。でも目の前に患者さまがいて困っている。この状況に対してどうアプローチをしていくか、という話です。
食品類似薬の保険給付見直しが進み、これまで処方されていた経腸栄養剤が外れるケースが出てきました。さらに2027年3月には、OTC類似薬の選定療養化が始まります。ロキソプロフェン、フェキソフェナジン、ヘパリン類似物質など77成分・約1,100品目が対象となり、処方薬の自己負担が増えることで「市販薬で済ませよう」という患者さまも増えてくるはずです。
処方箋の枚数が減るというより、処方箋の中身そのものが変わっていく。その感覚がじわじわと現場に広がっています。
同時進行する2つの見直しが薬局を変える
OTC類似薬の選定療養化と食品類似薬の保険給付見直しは、ほぼ同時期に動いています。この2つが重なると薬局の仕事の内容が大きく変わってきます。
OTC類似薬については、2025年12月に政府が77成分・約1,100品目を対象にした特別料金制度の創設を決定。2026年6月には厚生労働省が技術的検討会を開催し、対象品目の具体化に向けた議論が始まりました。施行は2027年3月の予定です。しかもこれは終点ではなく、政府は2027年度以降に対象範囲の拡大と特別料金の引き上げも検討すると明言しています。将来的には対象が数千品目規模になるという試算もあり、処方箋に載る薬のラインナップはこれからも変わり続けます。
食品類似薬は、すでに影響が出始めています。「経口で食事から栄養補給できる患者には保険給付しない」という方向性が明確になり、処方箋から経腸栄養剤が外れるケースが増えていきました。患者さまは次の選択肢を自分で探さなければなりません。その相談が冒頭のような形で薬局の窓口に来ています。
「処方箋があれば動く、なければ動かない」という姿勢のままでは、処方箋の外側で起きていることに気づけません。
ドラッグストア薬剤師に今一番問われていること
経腸栄養剤の処方が外れた患者さまに対して何ができるか。
病態・腎機能・糖尿病の有無などを踏まえながら、売り場にある栄養補助食品や介護食を選んで提案できる。この動きが自然にできるのは、調剤と売り場の両方を知っている薬剤師です。 調剤専門薬局の薬剤師が「できない」わけではありません。構造的にドラッグストア薬剤師のほうが動きやすい場面がこれからどんどん増えていきます。
OTC類似薬の選定療養化でも同じことが起きます。「処方薬よりOTCの方が安くなるなら自分で買います」という患者さまに「あなたの場合はこの成分でこの用量だとこの市販薬と同じです。ただこの薬との飲み合わせが気になるので、受診されたほうが安心です」などと具体的に話せる薬剤師がどれだけいるか。そういう話になってきます。
登録販売者や管理栄養士と連携しながら、必要な場面で薬剤師がきちんと前にでる体制をつくれているかどうか。それが、これからの薬局の信頼に直結します。
気づいた時にはもう遅い
処方箋が少し減っても、「まあ波があるものだから」と思ってやり過ごすことはできます。棚から栄養補助食品を探している患者さまがいても、声をかけなければ関係のない話として終わります。調剤室にいれば、そういう選択は毎日できてしまいます。 ただ、そのうちに患者さまは来られなくなります。患者さまは相談できる薬剤師がいる薬局にいくようになるでしょう。そうなってから動こうとしても、関係性はゼロからです。
2027年3月の施行に向けて、いまからできる準備もあります。自分の薬局でよく処方されている品目のうち、対象77成分に該当するものを把握しておくこと。患者さまへの説明がスタッフ間でばらつかないよう、ある程度フローを整えておくこと。そして売り場と調剤の間に、相談をつなぐ動線をつくっておくこと。どれも大げさな話ではなく、今から始められる話です。
制度が変わるほど、薬剤師の仕事の本質が問われる
調剤報酬改定、長期収載品の選定療養、OTC類似薬の保険給付見直し、食品類似薬の給付縮小など変化は続きます。
そのたびに処方箋の中身は変わり、薬局に求められることも変わっていきます。 制度の変化に対して「また業務が増える」と感じるのは自然なことです。
ただ、同時にこうも言えます。制度が複雑になるほど、患者さまは「ちゃんとわかってくれる薬剤師」を必要とします。「なんでこんなに高くなったの」「市販薬に変えても大丈夫?」「先生にもう処方できないって言われたけど、何を使えばいい?」そういう問いに答えられ、提案のできる薬剤師のところに患者さまは来られます。
処方箋がなくても来てもらえる。そんな薬局をつくることができるのは、制度ではなく、薬剤師だと思います。
