【2026年調剤報酬改定】立地依存型薬局はなぜ厳しくなるのか?薬剤師が押さえるべき算定要件と実務への影響
2026/04/10
投稿者:内田 武志
「また改定対応か…」で終わらせないために。2026年の調剤報酬改定を前に、「また算定要件の確認や届出対応が増えるのか」と感じている方も多いと思います。実際、調剤基本料の区分確認や施設基準の見直し、現場スタッフへの周知など、短期間で対応すべき業務はかなりの量になります。ただ、今回の改定は単なる点数の上下にとどまらず、「薬局の構造そのもの」に踏み込んでいる点がこれまでと大きく異なります。
そのため、目の前の算定対応だけでなく、「自分が働いている薬局がどの位置にあるのか」を整理しておくことが重要になると感じます。
今回の改定の方向性は「立地依存から面対応へ 」
2026年改定の大きなメッセージは、「立地依存型モデルからの脱却」です。
診療報酬全体ではプラス3%超と一見追い風に見えますが、調剤分野への配分は+0.08%にとどまっており、実質的には賃上げ原資や物価対応が中心です。つまり従来のビジネスモデルのままでは収益を維持しにくくなり、「構造に合った薬局」が評価されやすい仕組みに変わっています。これまでの基本料算定要件の「抜け穴」が塞がれてしまったのです。
改定①:調剤基本料の算定要件の厳格化
まず押さえておきたいのが、調剤基本料の区分です。今回の見直しでは、調剤基本料2の該当基準となる受付回数が「月4,000回超」から「月3,500回超」に引き下げられました。これにより、これまで基本料1を維持できていた薬局でも、処方箋枚数によっては基本料2に該当する薬局も多く出てきます。さらに大きいのが「300店舗以上」という店舗数要件の撤廃です。これまでは大手チェーンに限定されていた枠組みが、純粋に受付回数や集中率といった実態ベースに変わることで、中堅規模の薬局にも影響が広がります。また、面処方箋への対応(特定医療機関への依存度低減)もより強く求められる形となり、単純な枚数だけでなく、処方元の分散も評価に直結します。
改定②:新規開局と立地評価の変化
次に重要なのが、立地に関する評価の厳格化です。新規開局において、以下の条件に該当する場合:
・特定医療機関への処方箋集中率が85%超
・月間受付回数が600回超
この場合、開局当初から調剤基本料2が適用される仕組みになっています。さらに、
・医療機関から100m以内
・近隣に同様の薬局が複数存在
といった条件では、減算の対象となる可能性も示されています。これはつまり、「門前に出せば安定する」という従来のモデルを制度的に廃止し、薬局薬剤師の本質によって、今後の薬局ビジネスが左右される構造になっています。
集中率85%の壁が意味するもの
今回の改定で現場への影響が大きいのが、この処方箋集中率85%基準です。これまでは医療モール内に複数の医療機関を誘致することで、集中率の分散を図ってきた出店形態が多く存在していました。すでに多くの門前薬局がこの水準に該当していますが、結果として起こりうるのが①基本料の区分ダウン ②地域支援・医薬品供給対応体制加算の未取得 といった複合的な影響を受ける可能性があります。たとえば、月間処方箋1000枚規模の薬局では、条件次第で年間数百万円規模の減収になる試算もあり、決して軽視できるレベルではありません。こうした収益変動は、最終的に人件費や賞与に反映されることが多く、現場薬剤師の待遇にも間接的に影響します。
改定③:ベースアップ評価料と物価対応
一方で、ポジティブな要素として新設されたのが以下の点数です。
・調剤ベースアップ評価料:処方箋受付1回につき4点(2027年6月から8点)
・調剤物価対応料:3ヶ月に1回1点算定(2027年6月から2点)
これらは、一定の要件(賃上げ実施や体制整備)を満たすことで算定可能となり、薬剤師および事務職員の給与改善に直接つながる仕組みです。ただし、当然ながら全薬局が無条件に取得できるわけでなく、収益が下がる薬局では実質的に恩恵を感じにくいケースも出ています。
ドラッグストア併設薬局が有利な構造的理由
今回の改定で相対的に有利とされるのが、ドラッグストア併設型薬局です。この業態は、もともと複数医療機関からの処方箋を受ける「面分業型」に近く、結果として集中率が低くなりやすい特徴があります。そのため、85%基準に抵触しにくく、調剤基本料1を維持しやすい構造です。また、OTC医薬品48薬効群の取り扱いといった、地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件についても、日常の売り場構成がそのまま対応になっているケースが多い点は強みです。
それでも問われる「かかりつけ薬剤師」の実績
ただし、今回の改定は単に構造だけを見ているわけではありません。かかりつけ薬剤師指導料については、導入から約10年を経て見直しが進んでおり、形式的な届出ではなく、「実際にどれだけ関与しているか」がより重視されています。具体的には:
・服薬後フォローアップ
・在宅訪問
・ポリファーマシーへの介入
・有害事象の未然防止
といった実績ベースの評価項目が強化されています。来客数が多いだけでは評価されず、「継続的に関わっているか」が問われる設計です。こうした要件もドラッグストア併設薬局では満たしやすいと考えられます。もともと幅広い医療機関の処方箋を受け付ける薬局では、1人の患者が複数医療機関の処方箋の一元管理をお願いされているケースが多いです。ポリファーマシーや有害事象の発生については、一元管理をすることで問題点の抽出や具体的対応策を編み出すことが可能になります。
まとめ:構造と個人、両方が問われる時代へ
今回の改定は、「どこで働くか」と「どう働くか」の両方を強く意識させる内容になっています。門前型か、面分業型かという構造的な違いは確かに大きいですが、それだけで評価が決まるわけではありません。その環境の中で、どれだけ患者に対して継続的に価値提供ができているかが今後ますます重要になります。これまでのように立地や規模に依存した評価から、実態ベースの評価へ。今回の改定はその流れをより明確にした転換点といえます。
